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「たとえばですね。ナイフや銃弾が躰を貫けば、怪我をします。命を落とすこともあります。でも、もし、ナイフや銃弾が、もっとゆっくりで、何十年もかかってゆっくりと躰を通過したら、どうですか?」 「は?」赤柳は口を開けて、そのままの顔になる。 「目にはとても見えやすい。考える暇も充分にある。防ぐこともできそうな気がする。ところが一方では、放っておいても、怪我はしないでしょう。それは躰と同化し、きっとそのまま生き続けられる」 「気持ち悪い喩えですな、それは」 「ごめんなさい。それでは、躰ではなく、地面、あるいは地層でもけっこうです。一瞬で起これば地震として大きな被害が出る。何万年もかけて起これば、それよりも大きな変動なのに、誰も気づかない。そんな、ゆっくりとした外乱なのです」 「おっしゃりたいことは、わかります。しかし、どうして、そんなにゆっくりなんですか? 天才だったら、凡人よりも思考は早いはず。何故、そんな気の長い活動をするのでしょうか?」 「ええ、そこです。考えるべきは、その一点です。私も、そこが不思議で不思議でしかたなかった。だって、いくら天才でも、寿命は同じはず。だったら、なにをするにしても、普通よりも急がないと、自分のやりたいことは達成できないのではないか、そう考えますよね?」 「ええ、そう思います」 「ということは、たぶん、その時間や寿命については、なんらかの解決が既になされているのでしょう」 「え、解決って? 寿命をですか?」 「そうです」 「まさか」 「確かなことは、わかりません」西之園は首をふった。「ただ、それくらいは、たぶん……、あの人なら、簡単にやってのけるでしょう」西之園は、そこで少し微笑んだ。 引自 第4章 さらさらぜんぜん
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