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五つの王朝が交代を繰り返した華北、十の王国によって分割された江南ーー「五代十国」の時代は、中国史上にしばしばあらわれる「乱世」「分裂割拠」のくりかえしとして、いわゆる「唐宋変革期」における取るに足りない過渡期と見なされてきた。
しかし、我々は宋王朝を正統とするために打ち出されたこの「五代十国」の概念にとらわれ過ぎてしまっていたのではないか?
同時期の各政権・各地方を仔細に検討してみると、新時代に対応しようとする各々の模索のあり方が浮かびあがってくる。
従来「乱」や「離」としてばかり取り上げられてきた五代十国それぞれの「治」を先入観無く見つめることで、十世紀前後を跨ぐ中国史の大きな展開を明らかにする。
山根直生(やまね・なおき)
福岡大学教授。専門は中国唐宋時代史。
主な研究に、「五代洛陽の張全義―『沙陀系王朝』論への応答として」(『集刊東洋学』第114号、2016年1月)、「五代後周世宗朝をめぐる「だれが」「いつ」「どこで」―後周・北宋初のプロト・ナショナリズムに関する再考」(『史学研究』第305号、2020年3月)、「狼山の孫氏―河北定州資史料に見る宋遼境界の担い手」(『歴史資料と中国華北地域―遊牧・農耕の交錯とその影響』2021年1月)、などがある。
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