- 8 か月前
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ショートトランスクリプション
00:00日曜日の美香は早朝練習が終わると午後3時の練習開始までフリータイムであった
00:13だがその貴重な時間も洗濯や学校の勉強に追われて休む間もないのが常であった
00:23葉月美香、16歳、青春の真っ只中にある彼女は時として鋭い痛みを伴う孤独に胸を締め付けられる時があった
00:47こら、勝手に落ちるな
00:49ヨウカさんは東関東地区大会に向けて特訓をしているんだ
01:16指先まで真剣使って
01:19目線もっと上げてそこ
01:22手中引っ張って
01:24そこ上に引っ張って
01:29あ、そこダメよ
01:45全体に硬すぎるわ
01:47手の動きもっと柔らかくして
01:49もう一度はじめからやるわよ
01:50いやー、リョーコ、パパは最高に素敵だと思うよ
01:54ママはちょっと厳しすぎるからな
01:57あら、ミカさんどうぞお入りなさい
02:00あ、いいえ、私は
02:02遠慮しなくてもいいのよ
02:05あなたにも練習を見てほしいわ
02:07さあ
02:10あなた
02:12葉月美香さんよ
02:14私の主人なの
02:16葉月美香です
02:17あ、どうも
02:19えー、リョーコの父です
02:20あ、君が葉月美香さんか
02:22君のご噂は我が家でもしょっちゅう出てますよ
02:26君はバレエをやってたそうだけど
02:28シンクロは順調にいってますか?
02:30あたしには難しすぎて
02:32順調にいっているかどうかは分かりません
02:34でも、リョーコさんの練習を見ていると
02:36とてもすごいと思うし
02:38私も早くリョーコさんのようになれたらなと思います
02:41おー、リョーコ、褒めてくれてるぞ
02:44お前が目標だそうだ
02:46光栄だわ
02:47ずーっと葉月さんの目標でいられるように
02:49私も頑張らないとね
02:51ミカさんも一緒に頑張りましょう
02:53はい
02:54お母様、練習お願いします
02:57あ、あたしはこれでいいのよ
03:00いいえ、まだすることがたくさんあって
03:03失礼します
03:04リョーコの方がずーっと美人じゃないか
03:16さあ、始めるわよ
03:20それは…
03:22どっちでもいいえ
03:24うーん
03:25掛かってるし
03:27いやーそーっと
03:29みんなです
03:30まあみんな
03:31すぐに
03:33みんな
03:35って
03:36食べる
03:38もう
03:40何か
03:41二座
03:42から
03:471,2,3,4,5,6,7,8
03:591,2,3,4,5,6,7,8
04:071,2,3,4,5,6,7,8
04:173,4,5,7,8
04:473,4,5,7,8
05:173,4,5,7,8
05:473,4,5,7,8
06:17あれがクロールキック
06:21クロールキックの方が滑らかに進行できるわね
06:24まずミカがどれくらい潜水できるかテストします
06:29始めるわよ
06:36用意スタート
06:381,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,18
06:5110 11 12 13 14 15 16 18
06:59お母さん
07:02お母さん
07:04お母さん
07:21バカねえ
07:23初めから無理をする人がありますか
07:25ミカどうしたの
07:29ミカ上がっていいわよ
07:33いいえ続けます
07:35負けられないもの
07:36負けてたまるもんですか
07:51お母さん
07:56あんたどうしてあたしを捨てたのよ
08:01どうしてあたしが捨てられたのよ
08:03あたしをんどいて卑怯よ
08:05あんたは残酷で無慈悲な女よ
08:07あたしを捨てて何やってるのよ
08:09あたしを捨てて何やってるのよ
08:21ミカは
08:23母に捨てられたという思いを
08:25強く胸に刻みつけた少女であった
08:28まして北欧に行った父からは
08:31何の連絡もない
08:32孤独の悲しみが
08:34母を呪う言葉となって
08:37あふれ出ていった
08:51ミカは誰に言われたのか覚えていないのだが
08:58自分を捨てた幻の母が
09:01日本を代表する水泳の選手であったことを
09:05記憶の底に留めていた
09:21すいません
09:25はい
09:26あの昭和47年前後に活躍した
09:29女性スイマを調べたいんですが
09:31え?
09:32あ、あの私は高校の水泳部にいて
09:35水泳の歴史を調べたいと思ってるんです
09:37わからない
09:49私を捨てたあんたを誰?
09:52私の名を呼んでみてよ
09:54私の名はミカ
09:55忘れたなんて言わせない
09:57ミカ
10:06何してんの?
10:09何でもありません
10:10事務的な打ち合わせがあって
10:17水泳に来てたんだけど
10:18ミカがいるんで驚いたわ
10:20すいません
10:22学校をさぼりました
10:24学校をさぼってまで何を調べたかったの?
10:29ミカを捨てたお母さんは水泳の選手だったわね
10:33選手年間を調べてお母さんを突き止めたかったの
10:37そんなにお母さんに会いたい?
10:41会いたいなんて思っていません
10:42ならどうして?
10:44どんな顔しているのか見てやりたいの
10:46平気で私を捨てた女がどんな顔しているのか
10:49悔しいもの
10:51どうやって突き止めるつもりだったの?
10:5416年も前に引退した人たちは
10:56日本全国に散らばってるわ
10:58一人一人に
11:00あなたが私のお母さんですかって
11:02尋ねて歩くつもり?
11:04突き止めたところで
11:05その人は再婚して
11:07新しい家庭を持ってるかもしれないわね
11:09ミカはその家庭をぶち壊しに行くようなものね
11:15捨てられた恨みをそんな風に晴らすのは
11:18私は好きじゃないな
11:19私はあなたが嫌いです
11:21捨てられた恨みを晴らしたいんなら
11:24シンクロの第一人者になりなさい
11:26ミカの写真が全国紙に載れば
11:29黙ってたってお母さんは現れるわ
11:31その時思いの丈をぶちまけたらいいじゃないの
11:35嫌いです森谷コーチなんて
11:37あなたなんて大っ嫌い
11:39嫌いでも結構
11:40でもこの料理だけは全部食べなきゃダメよ
11:44母のことはもう忘れます
11:47だから森谷コーチも母のことは言わないでください
11:50いいわ
11:51約束よ
11:53ミカもよ
12:05私には誰もいない
12:14私は世界中で一人ぼっちなんだ
12:17私は
12:47あ、ミカが泳いでるわよ
12:53ミカ何をやってるんだよ
12:54練習のジャガース見つわりなの
12:55プールから出なさいよ
13:00ミカ、早く出なさいよ
13:02ミカ、いい加減にしなさいよ
13:05プールから出なさいよ
13:06ミカ、聞こえないよ
13:08ミカ、早く出なさいよ
13:09聞こえてるでしょ
13:10早く、聞こえてるでしょ
13:12早く、聞こえてるでしょ
13:14ミカ、早く出なさいよ
13:16ミカ、聞こえてるの
13:17ミカ、上がってらっしゃい
13:19いつまであんたしたちの練習のジャガースをしたら気が済むの
13:31そうよ、よけいものは引っ込んでなさいよ
13:33ミカ、いい加減にしなさいよ
13:35ミカ
13:44さあ、練習始めるわよ
13:46ミカさん、どうしたのかしら
13:51ミカは今、孤独と戦っているんですわ
13:55孤独?
13:56モスクワ留学を断念したミカは
13:58絶望の中で孤独に打ちのめされていました
14:01でもその時は
14:03私たちが強引にミカを外の世界に引っ張り出しました
14:07今度はミカが自分自身の力で
14:11孤独と戦わなければならないんですわ
14:13それはいけないわ、森谷先生
14:15ミカさんに手を差し伸べてあげて
14:18いいえ、私は黙って見ているつもりです
14:21森谷先生
14:23私はミカに
14:24孤独と真正面から向き合える女性になってほしいんです
14:28それができなかったら
14:30一流のシンクロスイマーには慣れっこありません
14:33草薙先生
14:35大丈夫です
14:37孤独との戦いも
14:38私の特訓スケジュールに入ってますから
14:51ミカ
14:52私は今日の練習はやりません
14:57そんな勝手な真似は許さないわ
14:59開けなさい、ここ
15:00開けないわ
15:01やらないったらやらないわ
15:03ミカ
15:03開けなさい
15:05いい加減にしなさい
15:10あんたこそいい加減にして
15:11やるやらないは私の勝手よ
15:13ミカ
15:14開けなさい
15:16どこ行くつもり
15:19私たちたまには街に出遊びたいわ
15:22ディスコに行ったりショッピングしたり
15:24そう、遊びたいの
15:25止めても無駄よ
15:27止めないわ
15:29行ってらっしゃい
15:30行くわよ
15:32どうぞ
15:33いい加減なすべての
15:37やる靴さんの
15:39お as yetしさ
15:39おやすみなさんの
15:41喜んでしょうか
15:43おやすみなさんの
15:44何か
15:46やる先に
15:48使いない
15:49おやすみなさんの
15:51もちがそこに
15:53音楽
16:23ミカ
16:43ミノルさん
16:44やっぱりミカか
16:46変なところで会うと思うだろう
16:49プールの練習がないときは
16:51いつもここでダッシュの練習をしているんだ
16:53もちろん無駄だからさ
16:55ここのうるさい管理人に見つかったら一目散んだ
16:58今の俺の記録じゃ世界に通用しないものな
17:020.1秒でも記録を伸ばさないと
17:04すごい気迫ね
17:06ああ
17:06今は気迫だけだ
17:08世界選手権で優勝でもしたら
17:11ミカにデートを申し込むか
17:13バカ言ってる
17:14ああ
17:15ミカは練習中じゃないのか
17:17そうなんだけどちょっと用があって
17:20そうか
17:21じゃあな
17:22あと20本
17:23ミカちゃん
17:40僕はミュージカルスクールに通うことにしたよ
17:43前々からミュージカルタレントになりたかったんだ
17:46人生は一回こっきりだし
17:48自分の夢をぶつけて生きた方がいいと思って
17:51自分の夢をぶつけて生きた
18:21みんな戦っている
18:31ミノルさんもケンゴさんも
18:33一人ぼっちと戦っているんだわ
18:35どうぞ
18:47ただいま帰りました
19:02お帰りなさい
19:05どう
19:06楽しかった
19:07森谷コーチ
19:09私は思い切り引っ張っていてください
19:11ミカ
19:17お父さんにもお母さんにも見捨てられて
19:19自分は世界中で一人ぼっちだなんて思ってたんじゃないの
19:23思い上がるんじゃないわよ
19:25この世界にはあなたより孤独な人が数え切れないくらいいるのよ
19:30心を凍えさせながら
19:33闇の中で震えてる人たちが何人も何人もいるのよ
19:36自分だけが孤独だなんて
19:39余ったれるもんじゃないわ
19:41孤独が辛くて逃げ出す人もいるわ
19:45ミカだってもう16歳なんだもの
19:48同じ年頃の女の子のように遊びたい気持ちはよくわかるわ
19:52でもミカはシンクロを選んだのよ
19:54孤独から逃げることはできないわ
19:57孤独を突き詰めて孤独に水晶の輝きを与えるの
20:01それがミカのシンクロだわ
20:04いつかミカの孤独が水の中に溶ける日が来るわ
20:09水の中に私の孤独が
20:16その夜ミカは不思議な夢を見た
20:34それはプールの中で泳ぐミカの体が
20:39水に溶けて光になる夢であった
20:42そこには孤独の苦痛も悲しみもなく
20:47限りなく自由で快適な永遠の時があった
20:52ご視聴ありがとうございました