私は誰も殺していません

by 故やす子

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1.
あー、カチューシャが目に、目に刺さる ぬくもりは、血液の循環、全部〇をした 一階下の家族は恋したの 背丈なら僕とおんなじくらい ねばっこい夏に向く景色は 半分に割れたりんごの蜜月だ 水曜の朝は生ごみを捨てた 45Lを四回に分け捨てた 鼻先に雨の気配、30度の晴れ間に 離れないようにくっつけた、少しも寂しくないように お化けがでるかも 少し怖くなった 一度だけ手を合わせて 洗濯物のことを思い出してる わかってる全部、全部〇をしたの はっきりと見えた余白 白よりも白く、雲よりは白くない ワッて聞こえたの、ずっとワッて とても痛くて、苦しくて 熱いのと冷たいのが一緒に来た
2.
観覧車に渦が巻いて 光らなくて、あっ光った いつでも夜は側に来て ロクでもないことを耳打ちして 僕はそれを無視できなくて 恥ずかしい気持ちになる 会いに来たよって、白々しくて 抱き寄せた手を切り落とした 僕はそれを無視できなくて 恥ずかしい気持ちになった しゅるるんシュレディンガーの猫は まだ猫じゃない ちゅーるに目がくらんでも まだ猫じゃない
3.
幽覧船 02:04
告別式の帰り道 長靴がふざけて舞う もう会えないよという声は何処か遠く お気に入りの傘は黄色 似たような鳥があなたと行くよ きっと寂しくないでしょう ふざけて作った不出来な歌が 僕はどうすればと泣いている 歌ってくれる人は何処、と泣いている 早く抱きしめてあげなくちゃ 下がり気味の眉が辿る軌跡 あなたという輪郭が好きだった これからはきっと、少し嫌いになるよ 花は白く、世は清か 明日も夢見ず幽覧船 何処まで行こうか 空は遠く、煙に巻く 明日も夢見ず幽覧船 何処まで行こうか 何処まで行けるか
4.
嫌なことは全部忘れた 塞いだら溢れだした 切っても消えない流線形 煤けた背中には怨念のような 人間が生きることを拒むような 傷が見えた あなたの止まり木でありたかった あなたの止まり木でありたかった 塞いだ目から涙が零れ落ちた あなたの一番になりたかった
5.
あー、暗いな 出口は、まだ 椅子は多分いらないから つつじ燃ゆる世界 冷静に媚びて、あーいつまで夢に見る ホットスナックは、あー腐って蛆がわく 窓からのぞく、あーいつもの灯が消える ここが分かれ目、あー私の火も消える 花火みたいなものだろう 花火みたいなものだろう
6.
路上生活 02:02
叫ぶ、ほんの一息 本当に酷い 気深さのない 井戸を掘り、笹舟を浮かべ 手にはアオ、藍染めのアト 袖に除く、白い腕 近所の子供たちが 傘を持って地図を描く 終わりのない旅路を 飽きたら帰路につく 夕餉の匂い 汁の垂れる青物 気づけば、ほんのりと空が暗い うちへ帰ろう 星空の示す高架下 BGMのない暮らし 私が歌えばそれでよい また雨が降ってきた 昼時の風景もこれで変わってしまったな ぐちゃぐちゃの地面を見て あの子たちは泣いてしまうのではないか 私は悲しいよ 私にとっては限られた喜びの景色のひとつなのだ 何もない何者でもない私にとっては 捨てられたラムネ瓶のビー玉さえもが、愛おしいのだ
7.
じゃあ、私帰るね、指切った、あなたと離れたとしても死にたくならないように 脱、光の三原色 人間を辞めました 朝顔の種、破損した屋根、表札、殺殺殺 今にも零れそうな、まだいけるか 止んだって、雨ならもう止んだって 不安だって、心ならもう砕いたって 正しさってなんだ、間違えないことか じゃあ、私帰るね、指切った、あなたと離れたとしても死にたくならないように 精一杯強がって見せた、あなたと離れたとしても死にたくならないように
8.
君は天才だ、将来が楽しみだなんて おだてられ、いつしか引きこもる 部屋の中今思えば、そんな記憶もなかったなって ずっとずっとずっとずっとずっと35点くらい 良く見積もって45点くらい 教室咳き込めば笑う気配 頭にクソでものっかってるのか 20年前に思考停止、今だったら殺せるのにな あーあ殺せるのにな どんな服を着たっていいのにな 起き抜けの吐き気が、鏡に映る現実が 腐ってる、腐ってる、もう俺は腐ってる 起き抜けの吐き気が、鏡に映る現実が 腐ってる、腐ってる、もう俺は腐ってる 起き抜けの吐き気が、鏡に映る現実が 腐ってる、腐ってる、もう俺は腐ってる 起き抜けの吐き気が、鏡に映る現実が 腐ってる、腐ってる、もう俺は腐ってる
9.
あなたママの子じゃないんだって かわいそう、私が守ってあげる 人生は今日がはじまり 私とあなた二つで一つ、一つで二つ、約束よ 日向に咲いている、ナガミヒナゲシの花 私とあなたによく似ている きれいでしょう?きれいでしょう? 淡い赤色が素敵でしょう? さわってはだめよ 小さな手が握り返した まだ小さな私の手よりも小さな手が
10.
春、忘れられない熱に苛まれ もう二度と誰も愛せないと大袈裟に騒いでいた 桜が景色を横切り 綺麗だ綺麗だと騒がれた後は 泥と共に踏みにじられる 夏、世界は冷たいと疑わず 厭世的な癖が染み付いていた 味のしない素麺を一昼夜啜り 高級そうな桐箱にわけもなく苛ついて 小馬鹿にしたように笑っていたのは、ハズレのアイスの棒 秋は、星が定点で輝いて 何もかもが新鮮でなくなり そして、冬 彗星に乗って彼の人は現れた 心を預けた友も親切な誰かも、みな有象無象 また始まってしまった病気につける薬はないと きっと医者もさじを投げる 今度こそ最後だからと 敬虔な信者の曇りなき瞳 御仁が望むなら 壺を買い 石に祈り 意味もわからず経を唱えよう 新しい宗教 私の拠り所
11.
なにもなくなった、朝のすずしさも なにもなくなった、夜のしずけさも 「まぁ!はしたない子ね!!」 って、よくぶたれたっけ てらてら鼻血が光った きらきら星も飛んだ いつまでも追いかけてくる あの影から逃げられない いつの日か終わるならと 夢見ていたそれも終わりの終わり なにもなくなった、真っ白な部屋で なにもなくなった!
12.
如何にもな形相、悪意のある答弁 後ろ手に武器でも隠しているかのような、そんな余裕すらうかがえる しかし、男は丸腰で、アクリル板を隔てたこちら側は安全と言える それなのに、この違和感はなんだろうか 私は誰も殺していません 男は、少し興奮気味に言った そして一度息を整えると、また静かに話し始めた 庭先に金木犀が咲いていましてね ちょうどかぶさるように、枯れ枝が私の視界を遮ったのですよ 私はそれをチョンっと切って、焚火にしました 焚火の煙が金木犀の匂いと合わさって、まるで腐肉のような そんな香りに化けましたね 目覚まし時計がけたたましく鳴り響きました 私は機械音痴なもので、止め方が一切わからなかったのですよ したがって、もう壊してしまおうと、ネジも針も全部とってしまおうと すべてバラバラにしてしまえば、鳴らなくなると思ったのです 赤い塗装も全部はがしました それから、私は食事をとりました 私、異食症という病を患っておりまして 食用以外の、例えばプラスチックとか、鉄製品とか、そういったものを食べちゃうんですね ですから、先ほど焚火にした枯れ枝も バラバラにした目覚まし時計も食べてしまいました 私は誰も殺していません

about

あなたは誰かを殺したことがありますか。

私はない。たぶん。
確かめたくて、鳴らした。


Have you ever killed someone?

I haven't. Probably.
I played to find out.

credits

released June 26, 2026

Music: 故やす子 (X: @ko_yasuko_)
Lyrics: 仮名 (X: @canamemomemo)
Artwork: 杉村 (X: @sugiyan1192)
Vocals: 歌愛ユキ, 月読アイ, 結月ゆかり, v_flower

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